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意外な大学の学部に「★★★」が付くかも!?

大学の学部を4段階で評価し、最高評価には星三つをつけよう――。中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)の作業部会で3月、文部科学省がこんな提案をしました。背景には何があるのでしょうか。実施は2030年度以降と先の話ですが、今から「星」の獲得を目指して改革に乗り出す大学が続出するとみられます。ブランドや偏差値では見過ごされがちな、意外な〝お得大学〟が見つかるかもしれません。

注)中教審「教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ」(3月17日)配布資料から抜粋 https://www.mext.go.jp/content/20260313-mxt_koutou02-000048207_2.pdf

新設は緩やかに、後でチェックする現行制度

かつて大学は、新設の際に文部省(現在の文科省)が厳しい審査を行って高等教育機関としての質を担保する一方、設置された後は大学の自助努力に任せることが長く続いてきました。
05年度以降、設置認可の「事前規制」は緩やかにし、代わりに7年ごとの認証評価を義務付ける「事後チェック」に転換しました。これにより「適合」と判断された大学には、安心して通えるというお墨付きが与えられることになります。
この認証評価制度には、学部を問わず大学全体の評価であること、評価結果が適合・不適合の二択でしか示されないという限界もあります。そこで中教審は25年2月の答申で、質の保証だけでなく「教育の改善」を促すような制度に替えるよう提言しました。

地方も含め「知の総和」を向上へ

なぜこんな答申をしたかというと、人口が減少する一方の日本を支えるには、高等教育の質を上げていく必要があるからです。
文科省は、大学進学者数が40年に現在の4分の3に当たる約46万人になると推計しています。これにより90校近くの大学・短大が廃校になる計算です。「量」が縮小するだけでなく、大学に入りやすくなることで教育や研究の「質」が低下してしまう心配も出てきます。
そこで答申で打ち出したのが「知の総和」です。知の総和とは「数×能力」のことで、数が減るなら能力の「質」を上げることで、知の総和を減らすのではなく逆に向上させようというわけです。
ここには、全国どこでも高等教育を受ける機会を確保しようという視点が含まれていることも見逃せません。大都市圏の大学に人気が集中し、地方から大学がなくなってしまっては、若者が減るだけでなく、地域経済を支える研究も衰退することになります。大学や経済界、自治体が一体となって地域の将来を考えることが、「知の総和」の向上には不可欠だとされています。

注)我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申)要旨から抜粋
https://www.mext.go.jp/content/20250221-mxt_koutou02-000040400_2.pdf

偏差値や知名度にとらわれず

新たな評価制度では、大学全体に加え、学部単位(短大は学科単位)でも評価する「2階建て」にします。学部を評価するのは、その学問分野に通じた人です。実態をよく知っている専門家のチェックを受けることで、質の保証だけでなく向上しようとする姿勢が判断できるというわけです。
作業部会で、委員の小林浩・リクルート進学総研所長は「これから18歳人口が大きく減ってくると、地方の中小(規模大学)がかなり影響を受け、一元的に偏差値みたいな入り口の尺度が当てはまらなくなってくる。知名度や規模にとらわれずに学生を受け入れて成長する大学を、どのように評価していくかがポイントになる」と指摘していました。
ただし、お得大学が見つかったからといって安心はできません。中教審では、大学生の学習時間が短いことが問題視されています。教育の質向上に取り組む学部に入学する以上、学生にも勉強に頑張る努力が求められることは間違いありません。

注)我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申)関係データ集(3)から抜粋
https://www.mext.go.jp/content/20250221-mxt_koutou02-000040400_5.pdf

渡辺敦司(わたなべ・あつし)
教育ジャーナリスト

1964年北海道出身、横浜国立大学教育学部卒。教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て98年よりフリー。主著に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社、2022年10月)。