Fラン大学に巨額の助成金?
デマ情報が高等教育を破壊する
Fラン大学に巨額の助成金?
デマ情報が高等教育を破壊する
2026.8
Fラン大学に巨額の助成金?
デマ情報が高等教育を破壊する
Fラン大学に巨額の助成金?
デマ情報が高等教育を破壊する
2026.8
「財政審『私大は40年までに4割減を』 医学部定員も削減要求」――。これは2026年4月23日の毎日新聞デジタルに掲載された見出しです。財政審(財政制度等審議会)は財務省の諮問機関。この分科会で同年4月23日に、今後の18歳人口の減少を見据えて大学数を縮減していくよう求めた」というニュースがマスコミ各社で相次いで流れ、拡散していきました。
このニュースを扱った記事には以下のような情報が盛り込まれていました。
■日本の私立大学には年間3000億円近い税金が投入されている。
■そのうち、偏差値が低かったり、定員割れなどで偏差値判定が困難な大学が存在し、そういう大学では四則演算やbe動詞など、小中学生レベルの学習を行っている。
■私立大学は現在約600校程度存在しているが、そのうち4割に当たる250校については削減すべきだ。
この報道を受けて、ネットメディアでは次のような言説が飛び交ったのです。
●Fランに税金を使うな。
●大学教育なのになぜ小中学校でやるべき学習を行っているのか。
これから10年くらいの時間をかけ、私立大学を偏差値が低い方から100校、200校単位で削減していくべきだという方向性を国民に意識させかねない論調です。
報道各社が示した財務省が発表した情報は決して誤報ではありませんが、ネットメディア各社が恐ろしいくらいに情報を誤った方向にねじまげており、危機感を煽ったり、Fラン不要論を声高に発信したりしています。
大学の入学難易度や偏差値などを根拠に作成したランキングは昔から存在し、大手予備校が作成しているものなどが多数あります。えぐさ塾塾長のえぐざまさんによれば、それらを分かりやすく分類したものの中に、「2000年ごろ、河合塾が規定した偏差値のつかない状態を指す、学部・学科」のことを合格のボーダーラインの判定ができないという意味で「ボーダーフリー」と呼び、略称が「BF大学」となり、それが転じて「Fランク大学」や「Fラン大学」と呼ばれるようになったようです。
昨今では、京都大学合格歴を持ち、大手予備校の教務を務めるYouTuberが、番組内で大学生に対して「Fラン」などと侮辱する発言をしたことで炎上しました。この一連の言葉は、ほぼ受験スラングと化しており、侮辱・差別的な意味を含むため、本来は多用する言葉ではありませんが、その「Fラン」が誤解を受けているのですから、この記事では「Fラン」ないし「Fラン大」と呼びます。
事情を知らないネットユーザーは、3000億円もの巨額の税金を、分け合っているから、「1校当たり5億円も国からの収入がある」と批判していますが、それは誤解です。現在、国が私立大学に対して支払っている私学助成金(私立大学等経常費補助金)は、当該大学に対し、年間の予算のおよそ10%程度を助成しているに過ぎません。
つまり、私立大学文系の学生ひとりが支払う年間の授業料が100万円だとすれば、学生から得られる100万円に加え、国から10万円が支払われるという程度です。
したがって、学生数の多い大学は高くなり、そうでない大学は低くなります。
令和7年の私学助成金交付金額の上位を見ると、大規模校や医学部などを有する大学が目立ちます。
例えば早稲田大学の学生数は39,000人なので、学生1人当たり23万円を助成されていることになります。
日本私立学校振興・共済事業団「令和7年度 私立大学等経常費補助金 交付一覧」より一部転載
https://www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_r07a.pdf
一方で、下位の方の10校を見てみると、最下位は200万円、578位の大学は900万円です。つまり、「定員割れしていても何億円も支給されている」というのは単なるイメージでしかなく、実は学生数や学校の収入に応じて1割程度しか支給されていないのです。
逆にいえば、最下位の大学は、国から200万円しか支給されていないけれど、その地域の高等教育を担うために努力しているのですから、むしろ賛辞に値する大学といえるはずです。
ちなみに、令和7年度の一覧によれば、年間1億円にも満たない私学助成金で運営されている大学は172校でした。この下位172校の助成金を合計すると、ほぼ早稲田大学1校分の金額になります。つまり、3000億円の私学助成金のうち、下位の大学を廃校にしたところで、100億円程度の節約にしかならず、逆にいえばその100億円があれば、全国の小規模大学の運営を下支えすることができて、地域の高等教育を担っているということになります。
助成金を受けている大学が大半ですが、受けられなかった大学も多数あります。
この助成金を受けられなかった大学は、例えば新設1年目の大学です。これは致し方ないとしても、大学そのものが不祥事だらけだったマンモス大学もあれば、文科省の求める定員を守らずに大量の学生を入学させてしまった大学、更に過去には大量の留学生を入学させたのに、学生の管理を怠って在留資格を無視した不法労働を黙認したなどがありました。これらの不祥事について、厳しく対峙しなければなりません。
「道理なき大学開設不認可は直ちに撤回を」――。これは2012年11月、短大や専門学校を4年制大学へ移行するに当たり、民主党政権下の田中真紀子文部科学大臣が認可せず、社会問題化したときの日本経済新聞の見出しです。
https://www.nikkei.com/article/DGXDZO48107420W2A101C1EA1000/
秋田公立美術大、札幌保険医療大、岡崎女子大の開設が不認可。大学の乱立を招いた設置認可のあり方そのものを見直すためですが、記事では「制度改革と個別の大学の開設可否を混同しており、尋常な判断ではない。文科相は速やかに不認可を撤回すべきである」と論じています。
大学を設置するためにあらゆる下準備をしているところに、田中大臣がその時の気分で不認可にしたような印象を受ける記事でしたが、この時の3校のうち2校は、現在、定員割れを起こしています。
田中大臣の不認可という判断は、結果的には世論の反発を受けて撤回することになりましたが、短大や専門学校のままであれば無難に存続できた可能性があります。しかも少子化の問題は露呈していたのに、無理に4年制大学に移行させてしまった社会に原因があるといえます。
今に始まったことではありませんが、有名大学による、私立高校の付属化・系列化が進んでいます。
例えば法政大学は「東京家政学院中学・高校」を「法政大学千代田三番町中学・高校」として系列化すると発表しました。
付属化・系列化によって学生を集めている大学といえば、上位は日本大学、東海大学、早稲田大学、慶応義塾大学などが挙げられます。一定のレベルを持つ全国の高校を傘下に入れることで、学力・スポーツ等で優れた学生を確保することができます。
地方の高校生の立場としては、確かにこれは都会の有名大学に入れるというメリットがあります。
とはいえ、地元に根付いた私立高校が、有名大学の名前がついた系列高校になってしまうと、少子化の進む社会では地方の私立大学への入学者を奪ってしまい,ひいては定員割れを引き起し、Fラン化を助長してしまいます。
そして大学受験予備校業界は、難関国立大学(旧帝国大学)、医学部、早慶などを目指す特進クラス的な運営をしつつ、MARCHや日東駒専と呼ばれるブランド大学を目指す特進クラスに準ずる生徒を集めるという戦略を取っています。
数十年前、若者の数が多かった時代の大学入試は、潤沢な学費を出せる家庭も多く、浪人させることも厭わなかったのですが、今は名前にこだわらなければ大学進学は容易にできるため、予備校も過当競争の時代になっています。
そんな時代の予備校業界にとって、難関大学やブランド大学を目指すことの価値を強調することは、生き残り策の一つなのかもしれません。しかし、それが「誰でも行けるFランに価値など無い」といった大学の価値を偏差値だけで決めるような言説につながるのであれば、疑問が残ります。
多かれ少なかれ、4年制大学は、競争によって一定数が統廃合される運命にあると思います。ただ、むやみやたらに偏差値で区切ってしまうのは誤りです。
私はこの「学費ナビ」という、学費を基準にした学校選びのためのポータルサイトが好きです。寄稿している理由は、学校選びを「かっこ良さ」「自慢できるか」「有名企業のウケがいいか」ではなく、自分の目指す人生設計を、コストのみで比較できる点に共感しているからであります。
同じ偏差値なら東京の有名大学へ行きたいという気持ちはわかる。だけど、必要な学位や資格、学べる内容を吟味したら地元の大学に自宅から通った方がコスパは良い。変な見栄のために、必要以上の支出は無駄であるということが可視化できるからです。
親の貯金をあてにし、奨学金を借りて進学するとしても、総支出を少なくして、自分の学びたいことにお金を使う方が楽しい人生だと思いませんか。
松本肇(まつもと・はじめ)
教育ジャーナリスト
専門分野は大学改革支援・学位授与機構を活用した学位取得方法、通信制大学・通信制高校・高卒認定試験・専門学校など。著書「短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒」等。
いわゆる「学歴フィルター」と呼ばれる価値観よりも、大学で得られる「アカデミックスキル」という数値化しにくい教育の有無に関心がある。
日本テレビ「DayDay.」、フジテレビ「めざまし8」、「ホンマでっか!?TV」、ABEMA「アベマプライム」などでゲストコメンテーターを務める。